世界のポリオ流行状況とワクチン接種について

 下記に示すとおり、日本人のポリオワクチンは2回接種で、3型の免疫獲得が低い。
 ナイジェリアに行くなら3型も流行しているので、1962年以降の生まれは1回以上追加することがおすすめ。


● ポリオ流行の現状
 情報源:Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) 2004; 53(16): 363-366、4月30日。
 1988年のポリオ根絶世界保健会議World Health Assembly決議(文献1)以来、3つのWHO地域(アメリカ、西太平洋、ヨーロッパ)はポリオ終息を証明され、ポリオが常在する国々の数も1988年の125ヵ国から2003年の6カ国(アフガニスタン、エジプト、インド、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン)に減少した。

 2003年に、アフリカ大陸で最大の人口を有する(1991年次人口調査から推定した2003年人口:1億2,500万人)ナイジェリア当局は、ポリオウイルス野生株(WPV)感染患者355名を報告したが、これは全世界で報告された患者の45%に相当し、アフリカ地域から報告された患者の80%以上に相当する。この報告は、2003年1月から2004年3月までの期間の、ナイジェリアでのポリオ根絶に向けた前進を要約する。こうした事実は、現在もナイジェリアで発生しているWPV感染伝播を中断するためには、高品質の補助的予防接種活動supplementary immunization activities (SIAs)を実施する緊急の必要性を示している。

ナイジェリアでのポリオウイルス野生株(WPV)感染患者発生率:
 2002年〜2003年の間に、ナイジェリア国内のポリオウイルス野生株感染(WPV)確定患者数は202名から305名に増加した。そのうち、192名がポリオウイルス1型(PV1)感染であり、163名がPV3感染であった。2003年には、37州中23州が少なくとも1例のWPV患者を報告したが、これは15州がWPV患者を報告した2002年よりもより広域で感染循環が認められたことを示している。
 2003年には、ナイジェリアでの流行はKano州に集中した。

情報源: WHO WER 2005/1/7
 現在流行している国は6カ国(ナイジェリア、インド、パキスタン、ニジェール、アフガニスタン、エジプト)のみ。
 2003年中ごろより、13カ国でナイジェリア北部での流行ウイルスと関連した野生株の輸入がおきた。
 この13カ国のうち、4カ国(ブルキナファソ、チャド、コートジボアール、スーダン)で、(6ヶ月の感染流行が再発生した。


● 日本でのポリオワクチンの抗体獲得低下
 予防接種のてびき第9版より(要約)

1960年にポリオ最悪の流行が起き(患者数5606人)、1961年に厚生大臣の判断で生ワクチンを導入(患者数2436人)、1962年に患者数は激減した(患者数63人、以後30人未満)。
1961年以前(42歳以上)の出生者は、I,II,III型ともに、高い抗体価を維持している。
1975〜1977年(昭和50年〜52年)生まれの者が受けたポリオワクチンによる抗体獲得率が著しく低かったため、該当者は1回の追加接種を推奨する。
また、全体的に、1962〜1977年生まれの者は、I,III型両方の免疫が低い傾向にある。2回の接種が望ましい(個人的見解)

流行とその対策による抗体保有率の推移

1961年以前の出生者は、I,II,III型ともに、高い抗体価を維持している。野生株の自然感染によりブースター効果が得られたためと考えられる。
それ以下の年代の型別抗体保有率は、
II型 : 21歳より若い年齢層で90%以上の保有率があるが、23歳前後で保有率の低いところが見られる。
I型: 前年礼装を通じて90%以上の高い抗体保有率を示している。
III型: 全体として低く、凹凸が多い。99年の保有率では25歳頃が50%以下で、70%以下の谷はいくつもある。これはII型、I型よりIII型ワクチンの抗体獲得率が低いためである。ウイルスの間で干渉現象が起き、II型が増殖するとI型、III型が増殖できず、抗体産生も低下する。2回目の接種では、II型は獲得された免疫により抑制されるためI型、III型が増殖し、免疫が獲得される。
 3種類の型が相互に干渉現象が起きるため、免疫を確実に獲得するためには3回以上の接種が望ましく、多くの国では4〜5回以上の接種を行っている。しかし日本では2回接種で流行を充分に抑制でき、患者の散発すらなくなったため、行政的に3開放に増強する必要が認められず、現在にいたっている。

接種間隔について
 それぞれの接種では、前回の接種で干渉により獲得されなかった型に対する免疫をするためなので、接種間隔は長く空いても問題ない。