後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針

(平成11・10・4 厚生省告示第二百十七号)


○厚生省告示第二百十七号
後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針
第1 原因の究明
第2 発生の予防及びまん延の防止
第3 医療の提供
第4 研究開発の推進
第5 国際的な連携
第6 人権の尊重
第7 普及啓発及び教育
第8 関係機関との新たな連携

 


 

○厚生省告示第二百十七号
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第十一条第一項の規定に基づき、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針を次のように作成したので、同条第二項の規定に基づき、公表する。

 

平成十一年十月四日
厚生大臣 宮下 創平

 


 

後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針

後天性免疫不全症候群や無症状病原体保有の状態(HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染しているが、後天性免疫不全症候群を発症していない状態をいう。)は、正しい知識とそれに基づく個人個人の注意深い行動により、多くの場合、予防することが可能である。また、近年の医学や医療の進歩により、感染しても早期発見及び早期治療によって長期間社会の一員として生活を営むことができるようになってきており、様々な支援体制も整備されつつある。しかしながら、我が国における発生の動向については、他の多くの先進諸国とは異なり、地域的にも、また、年齢的にも依然として広がりを見せており、特に近年の傾向としては、日本人男性が異性間及び同性間の性的接触によって国内で感染する事例が増加している。こうした状況を踏まえ、今後とも感染の予防及びまん延の防止を更に力強く進めていく必要があり、そのためには、正しい知識の普及啓発や教育とともに、国、地方公共団体、医療関係者や患者団体を含む非政府組織(以下「NGO」という。)、海外の国際機関等との連携体制を強化していくことが重要である。
また、我が国の既存の施策は全般的なものであったため、特定の集団に対する感染の拡大の抑制に必ずしも結び付いてこなかった。こうした現状を踏まえ、国及び都道府県等(都道府県、保健所を設置する市及び特別区をいう。以下同じ。)は、個別施策層(感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別の配慮を必要とする人々をいう。以下同じ。)に対して、人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を追加的に実施することが重要である。個別施策層としては、現在の情報にかんがみれば、性に関する意志決定や行動選択に係る能力の形成過程にある青少年、言語的障壁や文化的障壁のある外国人及び性的指向の側面で配慮の必要な同性愛者が挙げられる。また、性感染症としてHIV対策を進める観点からは、性風俗産業の従事者及び利用者も個別施策層として対応する必要がある。なお、具体的な個別施策層については、状況の変化に応じて適切な見直しがなされるべきである。
さらに、施策の実施に当たっては、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平 成十年法律第百十四号。以下「法」という。)の理念である感染症の予防と医療の提供を車の両輪のごとく位置付けるとともに、患者等(患者及び無症状病原体保有者(HIV感染者)をいう。以下同じ。)に対する偏見や差別を解消し、人権を尊重していくことが大切であるという考えを常に念頭に置き、総合的な対策を関係者が協力して進めていくことが必要である。
本指針は、このような認識の下に、我が国におけるHIV感染の拡大の抑制、患者等に対する人権を尊重した良質かつ適切な医療の提供等といった後天性免疫不全症候群に応じた予防の総合的な推進を図るため、国、地方公共団体、医療関係者及びNGO等が共に連携して進めていくべき新たな取組の方向性を示すことを目的とする。
なお、本指針については、少なくとも五年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更していくものである。

 


 

第一 原因の究明

 

  一 エイズ発生動向調査の強化

国及び都道府県等がHIV感染に関する情報を収集及び分析し、国民や医師等の医療関係者に対して情報を公表していくこと(以下「エイズ発生動向調査」という。以下同じ。)は、感染の予防及び良質かつ適切な医療のための施策の推進に当たり、最も基本的な事項である。このため、法に基づくエイズ発生動向調査の分析を強化するとともに、患者等への説明と同意の上で行われる病状に変化を生じた事項に関する報告である任意報告による情報の分析も強化すべきである。
 

  二 個別施策層に対する施策の実施

国及び都道府県等は、個別施策層に対するエイズ発生動向調査の分析を強化する必要がある。また、必要に応じて、人権に配慮した上で、言語、文化、知識、心理、態度、行動、感染率、社会的背景等を含めた疫学的調査研究及び社会科学的調査研究を当事者の理解と協力を得て行うことが必要である。さらに、これらの調査研究の結果を迅速に国及び都道府県等の施策に反映させることが必要であり、個別施策層に情報及び研究成果を提供することが重要である。
 

  三 国際的な発生動向の把握

国際交流が活発化し、多くの日本人が海外に長期又は短期間滞在しているとともに、日本国内に多くの外国人が居住するようになった状況にかんがみ、海外における発生動向も把握し、我が国への影響を事前に推定することが重要である。
 

第二 発生の予防及びまん延の防止

 

  一 基本的な取組

感染を予防するためには、現在における最大の感染経路が性的接触であるという認識に立つとともに、正確な情報と知識を普及し、個人個人が実際の行動に結び付けていくことが重要である。この場合、新規の感染の多くを占める日本人男性の性的接触による感染の予防に従来以上に積極的に取り組むべきである。特に、感染の危険の高い行動に対して、個人個人の行動に変化をもたらすための具体的方策について研究し、施策に反映させる必要がある。また、静注薬物の使用、輸血、母子感染、医療現場における事故による偶発的な感染といった性的接触以外の感染経路については、厚生省は、関係機関と連携をとり、予防措置を強化することが重要である。なお、これらの施策の実施に当たっては、厚生省は、保健所等のみならず、国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター、地方ブロック拠点病院、エイズ治療拠点病院等と連携を図ることが重要である。
 

  二 個別施策層に対する施策の実施

既存の施策は全般的なものであり、特定の集団に対する感染の拡大の抑制に必ずしも結び付いてこなかったため、国及び都道府県等は、個別施策層に対して、人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を追加的に実施することが重要である。
 

  三 性感染症対策との連携

現状では、最大の感染経路が性的接触であること、性感染症の罹患とHIV感染の関係が深いこと等から、予防及び医療の両面において、性感染症対策とHIV感染対策との連携を図ることが重要である。したがって、別途作成される性感染症に関する特定感染症予防指針に基づき行われる施策とHIV感染対策とを連携して、対策を進めていくことが必要である。具体的には、低用量経口避妊薬が承認されたことに伴い、性感染症の感染予防対策として、コンドームの適切な使用を含めた性感染症の予防のための正しい知識の普及等が挙げられる。
 

  四 検査体制の維持及び強化

保健所は、現在実施している無料の匿名による検査を継続するとともに、個人情報の保護に十分配慮することが必要である。また、必要に応じて、利便性の高い場所と時間帯を配慮した検査を実施する等の検査を受ける機会の拡大も重要である。特に、個別施策層に対しては、検査の機会と実施体制に関する情報提供に努める等検査を受けやすくするための特段の配慮が必要である。さらに、検査を円滑に進めるためには、検査の匿名性や職員の守秘義務が必要であり、職員の研修の中で徹底することが重要である。
 

  五 検査時の相談(カウンセリング)体制の充実

検査受診者のうち希望する者に対しては、検査前後に相談の機会を与え、必要かつ十分な情報に基づく意思決定の上で検査が行われることが必要である。特に患者等や個別施策層に属する者に対しては、心理的背景や社会的背景にも十分に配慮した相談が必要であり、専門の研修を受けた者によるもののみならず、ピア・カウンセリング(患者等や個別施策層の当事者による相互相談をいう。以下同じ。)を活用することが有効である。
 

  六 保健医療相談体制の充実

HIV感染の予防や医療の提供に関する相談窓口を維持すると同時に、性感染症に関する相談、妊娠時の相談といった様々な保健医療相談サービスとの連携を強化する必要がある。特に個別の施策が必要である地域においては、相談窓口を増設することが必要である。また、相談の質的な向上を図るため、必要に応じて、その地域の患者等やNGOとの連携を検討すべきである。
 

第三 医療の提供

 

  一 医療提供体制の確保


1 医療機関の確保

患者等に対する医療及び施策が更に充実するよう、国のHIV治療の中核的医療機関である国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター、地方ブロック拠点病院及びエイズ治療拠点病院の機能を強化し、医療水準の向上及びその地域格差の是正を図るとともに、一般の医療機関においても診療機能に応じた良質かつ適切な医療が受けられるような基盤作りが重要である。


2 総合的な診療体制の確保

高度化したHIV治療を支えるためには、専門医等の医療関係者が連携して診療に携わることが重要であり、専門的な医療サービスが一の医療機関内又は当該医療機関が属する地域内で満たされるようにする必要がある。また、精神的側面及び心理的側面に対する医療サービス及び歯科医療サービスの受けやすさの確保も重要である。
 さらに、今後は、専門的医療と地元地域での保健医療サービス及び福祉サービスとの連携、検査受診や感染の予防に関する啓発及び情報提供等を円滑に行っていくことが必要であり、これらの「各種保健医療サービス及び福祉サービスとの連携を確保するための機能」(コーディネーション)を強化していくべきである。また、医療現場における医療従事者への偶発的な感染に対する取組を強化することによって、医療従事者と受診者の双方にとって安全な診療体制を確保することも重要である。


3 十分な説明と同意に基づく医療の推進

治療効果を高めるとともに、感染の拡大を抑制するためには、医療従事者は患者等に対し、十分な説明を行い、理解を得ることが不可欠である。具体的には、医療従事者は医療を提供するに当たり、適切な療養指導を含む十分な説明を行い、患者等の理解が得られるよう継続的に努めることが重要である。この場合、患者等の理解を助けるため、分かりやすい説明資料を用意すること等が望ましい。また、患者等が主治医以外の医師の意見を聞き、自らの意思決定に役立てることも評価される。


4 主要な合併症及び併発症への対応の強化

HIV治療そのものの進展に伴い、結核、悪性腫瘍等の合併症や肝炎等の併発症を有する患者への治療も重要になってきており、これらの治療に関する診療機能を強化することが重要である。特に、エイズ治療拠点病院においては、これらの診療機能が一の医療機関内又は当該医療機関が属する地域内で満たされることが望ましい。


5 情報ネットワークの整備

患者等や医療関係者が、治療方法や主要な合併症及び併発症の早期発見方法等の情報を容易に入手できるように、インターネットやファクシミリにより医療情報を提供できる体制を整備することが重要である。また、診療機関の医療水準を向上させるために、個人情報の保護に万全を期した上で、HIV診療支援ネットワークシステム(A―net)等の情報網の普及や患者等本人の同意を前提として行われる診療の相互支援の促進を図ることが重要である。さらに、医療機関や医療従事者が相互に交流することは、医療機関、診療科、職種等を超えた連携を図り、ひいては、患者等の医療上の必要性を的確に把握すること等につながり有効であるため、これらの活動を推進することが望ましい。


6 在宅療養支援体制の整備

患者等の療養期間が長期化したことや患者等の主体的な療養環境の選択を尊重するため、在宅の患者等を積極的に支える体制を整備していくことが重要である。このため、国及び地方公共団体は具体的な症例に照らしつつ、患者等の在宅サービスの向上に配慮していくよう努めることが重要である。


7 外国人に対する医療への対応

我が国に滞在する外国人患者等へ適切な医療を提供することは、本人にとってのみならず、感染の拡大の抑制にも重要な事項である。このため、検査や治療に関する相談の機会の増加を図るべきであり、ボランティアやNGO等による通訳、翻訳等の多言語での対応の充実が必要である。


8 人材の活用

HIVに関する教育及び研修を受けた人材が、効率的に活用されることが重要であり、それらの者が一の医療機関内又は当該医療機関が属する地域内において、機能的に用いられるべきである。


9 治療薬剤の円滑な供給確保

国は、患者等が安心して医療を受けることができるよう、治療薬剤の円滑な供給を確保することが重要である。また、国内において薬事法(昭和三十五年法第百四十五号)で承認されているがHIV感染又はその随伴症状に対する効能又は効果が認められていない薬剤の中で効果が期待される薬剤の医療上必要な適応拡大を行うとともに、海外で承認された治療薬剤がいち早く国内においても使用できるようにする等の措置を講じ、海外との格差を是正していくことが重要である。

 

  二 個別施策層に対する施策の実施

個別施策層に対して適切な医療を提供するためには、その特性を踏まえた対応が必要であり、そのためには、医療関係者への研修の機会や対応手引書の作成等の機会に個別的な対応を考えていくことが重要である。
 

  三 日常生活を支援するための保健医療サービスと福祉サービスの連携強化

患者等の療養期間の長期化に伴い、障害を持ちながら生活する者が多くなったことにかんがみ、保健医療サービスと障害者施策等の福祉サービスとの連携を強化することが重要である。その方策として、専門知識に基づく医療社会福祉相談(医療ソーシャルワーク)等のほか、ピア・カウンセリングの積極的な活用を推進することが重要である。また、患者及びその家族等の日常生活を支援するという観点から、その地域のNGOとの連携体制、社会資源の活用及び人権侵害等における相談方法や相談窓口についての情報を普及する必要がある。
 

第四 研究開発の推進

 

  一 研究の充実

患者等の人権に十分配慮した良質かつ適切な医療サービスの提供を充実していくためには、研究結果が感染の拡大の抑制やより良質かつ適切な医療につながるような研究を行っていくべきである。特に、各種治療指針の作成等は優先的に考慮されるべきであり、感染症の医学的側面や自然科学的側面のみならず、社会的側面や政策的側面にも配慮することが望ましい。
 

  二 特効薬等の研究開発

国は、特効薬、ワクチン、診断法及び検査法の開発に向けた研究を強化するとともに、研究目標については戦略的に設定することが重要である。この場合、研究の科学的基盤を充実させることが前提であり、そのためにも、関係各方面の若手研究者の参入を促すことが重要である。
 

  三 研究評価の充実

国は、研究の充実を図るため、研究の結果を的確に評価するとともに、研究の成果を医療機関や患者等に提供することが重要である。
 

第五 国際的な連携

 

  一 諸外国との情報交換の推進

政府間、研究者間及びNGO間の情報交換の機会を拡大し、感染の予防、治療法の開発、患者等の置かれた社会的状況等に関する国際的な情報交流を推進し、我が国の対策にいかしていくことが重要である。
 

  二 国際的な感染拡大抑制への貢献

国は、国連合同エイズ計画(UNAIDS)への支援、我が国独自の二国間保健医療協力分野における取組の強化等の国際貢献を推進すべきである。
 

  三 国内施策のためのアジア諸国等への協力

有効な国内施策を講ずるためにも、諸外国における情報を収集するとともに、諸外国における感染の拡大の抑制や患者等に対する適切な医療の提供が重要であることから、我が国と人的交流が盛んなアジア及び中南米諸国等に対し積極的な国際協力を進める上で、外務省等との連携が重要である。
 

第六 人権の尊重

 

  一 人権の擁護及び個人情報の保護

保健所、医療機関、医療保険事務担当部門、障害者施策担当部門等においては、個人情報の保護を徹底することが重要であり、各種の研修を実施すべきである。また、人権や個人情報の侵害に対する相談窓口等に関する情報を提供することも必要である。なお、相談に当たっては、専用の相談室を整備する等の個人情報を保護する措置が必要である。さらに、報道機関には、患者等の人権擁護や個人情報保護の観点に立った報道姿勢が期待される。
 

  二 偏見や差別の撤廃への努力

患者等の就学や就労を始めとする社会参加を促進することは、患者等の個人の人権の保障及び福利の向上だけでなく、社会全体の感染に関する正しい知識や患者等に対する理解を深めることになる。また、個人や社会全体において、知識や理解が深まることは、個人個人の行動に変化をもたらし、感染の予防及び啓発に寄与することにもつながる。このため、厚生省は、文部省、労働省、法務省等の関連省庁や地方公共団体と連携して、患者等や個別施策層に対する偏見や差別の撤廃のための正しい知識の普及啓発を行うとともに、偏見や差別の撤廃に向けての具体的資料を作成することが重要である。特に、学校や職場における偏見や差別の発生を未然に防止するためには、学校や企業に対して、事例研究や相談窓口等に関する情報を提供することが必要である。
 

  三 十分な説明と同意に基づいた個人を尊重した保健医療サービスの提供

HIV感染の特性にかんがみ、検査、診療、相談、調査等の保健医療サービスのすべてにおいて、検査受診者及び患者等に説明と同意に基づいた保健医療サービスが提供されることが重要であり、そのためにも、希望する者に対しては容易に相談の機会が得られるようにしていくことが重要である。
 

第七 普及啓発及び教育

 

  一 感染予防のための普及啓発の強化

我が国に在住するすべての人々に対して、感染に関する正しい知識を普及できるように、学校教育及び社会教育との連携を強化して、効果的な教育資材を開発する等の具体的な普及啓発活動を行うことが重要である。また、患者等やNGOが実施する性行動等における感染予防のための普及啓発事業が円滑に行われるように支援することが重要である。
 

  二 患者等及び個別施策層に対する普及啓発の強化

感染の機会にさらされる可能性を低減させるために、各個別施策層の社会的背景に即した具体的な情報提供を積極的に行う必要がある。このため、個別施策層に適した普及啓発用資材、患者等が主体的に治療に参加できるための疾患の解説書、服薬支援のための手引書、女性や妊婦といった個別の留意事項を必要とする者ごとの疾患の解説書等を患者等とNGOの共同で開発し、普及啓発事業を支援する体制の確立が必要である。
 

  三 医療従事者等に対する教育

研修会等により、広く医療従事者等に対して、最新の医学や医療の教育のみならず、患者等の心理や社会的状況を理解するための教育、患者等の個人情報の保護を含む情報管理に関する教育等を行っていくことが重要である。
 

  四 関係機関との連携の強化

厚生省は、具体的な普及啓発事業を展開していく上で、文部省、労働省及び法務省と連携して、教育及び啓発体制を確立することが重要である。また、報道機関等を通じた積極的な広報活動を推進するとともに、保健所等の窓口に外国語で説明した冊子を備えておく等の取組を行い、旅行者や外国人への情報提供を充実させることが重要である。
 

第八 関係機関との新たな連携

 

  一 省庁、NGO等を含めた関係機関の連携の強化

関係するすべての機関が、役割を分担、協力し、それぞれの立場からの取組を推進することが必要であり、「新たな連携」(パートナーシップ)を確立しなければならない。そのためには、関係省庁間連絡会議や国及び地方公共団体のHIV担当者会議を設置するとともに、厚生省、文部省及び科学技術庁における研究の情報交換、官民連携による施策の推進、「人権教育のための国連一〇年」国内行動計画の趣旨を踏まえた人権啓発事業との連携等を図る必要がある。また、国及び地方公共団体とNGOとの接点を強化することにより、相談体制の充実を図るとともに、個別施策層に対する発生動向調査及び施策を推進することが重要である。
 

  二 保健所の役割の強化

地域の必要性に応じ、普及啓発事業の中核としての保健所の役割を強化するとともに、感染予防対策を推進する上での所管地域の特性等の留意点を分析できるよう保健所の機能強化を図ることが重要である。
 

  三 本指針の進捗状況の評価と展開

本指針を有効に機能させるためには、関係者が協力して本指針に掲げた施策に取り組むことが極めて重要である。このため、国は、本指針に基づいて行われる取組の進捗状況に関する年次報告書を作成するとともに、次年度の施策に結び付けるため、患者等、医療関係者、NGO、個別施策層その他の関係者と定期的に意見を交換すべきである。また、国及び関係者は、それぞれの立場を踏まえながら協力するとともに、本指針に基づいて行われる取組の進捗状況を検討する会議の場を設け、必要に応じて、柔軟にその取組を見直していくことが必要である。
 

問合先:厚生省保健医療局エイズ疾病対策課
     清水(内線2358)
     大山(内線2357)
     市原